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鮮烈なるデビュー!スーパールーキー、チームを救う

2008/05/25

 524日、桐蔭学園との激戦以来となる久々の公式戦、横浜市大会の初戦が行なわれた。この日の相手は関東学院六浦高校。歴史は浅いものの附属中学にラグビー部を持ち、6年一貫でプレー。つまりほとんどが経験者だ。加えて監督は超一流の指導者。関東学院大学を日本の最高峰に導いた経験を持つ。一見してデカい。どのポジションも柏陽選手の倍くらいの筋肉量を持っている。目立つ戦績はないものの、決して油断できる相手ではない。

マッチャンにしてこの体格差・・・

14:00 キックオフ。直後からブレイクダウンで圧倒される。コンタクトが重く、腕っ節がめっぽう強い。その圧力が精神的プレッシャーとなり、我慢できずに密集でペナルティーを犯す最悪の展開。開始早々FWサイドを力技でこじ開けられ、トライを奪われる。

その後も同様の「密集ペナルティー⇒自陣ゴール前釘付け」が続いた。さすがにFWも意地を見せてEBIや椿中心に刺さり続け、あと一歩を譲らない。前半15分、なんとか脱出のキックを両CTBがチェイス&タックルでしとめ、忠実に走っていたEBIのジャッカル+リョウのジャッカルアシストでターンオーバー。大きく展開してコパがロングゲインし、最後はイマカズがインゴールを陥れた。

リョウ

「今日はFWに戻って本格的な試合の初めての日、がらにもなく張り切っていた。しかし今日の試合自分は全然だめだった…タックルは全然制圧はできてない、相手のでかいやつにいったら思い切り吹っ飛ばされるし、スクラムはボールキープは上手くできないし、ラインアウトはまだ勘を取り戻せず微妙だし、走り切れないし、と良い事が全くない一日だった。ただわかったのは練習では強くて低いタックル、勢いのついたヒットができるけど、いざ試合になるとできない…それはなんでか??やっぱりまだ俺はびびってるそのせいで思いっきりいけない、そのためにももっと練習、練習そして心ももっともたなきゃと思った。それと動けないとすぐ痛みのせいにする、この癖もなおさなければと痛感した。この時期に気付いて良かった。夏までにはこれらを直してタックルを任せられる、びびらないFWになる。一年生には負けてられない。」

前半の問題点は、攻撃が全く機能しなかったこと。経験の浅いハーフ団(あずき・まっつん)の動きが固く、ラインが全く生きない。FW15mモールをドライブしてBKに展開するも、ハーフ団で暴投+相手にパスで、50m下げられる始末。15分経過したあたりからやっと固さが取れてさばきも良くなったが、トライメイクには至らず。DFでは二人とも献身的に体を張り続けるも、攻撃面ではまだまだ経験と練習、それに基づく自信が足りないことを思い知らされた。

 

一歩ずつ着実にステップアップしているハーフ団。これからも練習あるのみ!

後半はメンバーを一気に5枚替え。ハーフ団に3年生コンビ、ロックにやっさん、両翼には2ヶ月ぶりの復帰となるエース・カズとデビュー戦のオギ(1年生)が登場した。

展開はというとセットプレーが完全に崩壊。勝負どころでのラインアウトミスはゲームを崩し、スクラムに関しては木っ端微塵に破壊された。アタックDF関わらず相手の意のままにスクラムはホイールされ、自陣ゴール前ではマイボールを猛プッシュで奪われ、そのまま相手エイトのトライ(印象としてはまるでスクラムトライ)が2回。ここまでセットでやられたのは、いったいいつ以来だろか。屈辱。

しかし攻撃にリズム感が生まれた柏陽は、本来のランニングラグビーを展開。コミットしてストレートパス、ずらしてオフロードなど、この1ヶ月の成果をところどころに見せ、コパやケイがトライを奪った。

ケイ

「今日の試合でどえらいタックルを決めたかったのですが、全然でした。もっと試合にいきる練習を積んでいかなきゃと思いました。ただ、やっぱりこのチームはいいチームだと再確認できました。最高の仲間と最高の結果を残すために、最高の練習をしていきたいです!」

さて本題。この日の主役は完全にルーキー・オギだった。オギが出場したのは後半5分。出場時間の僅か20分間で鮮烈なるデビューを果たした。出場から5分、コパの落とした難しいボールを加速しながら拾い上げ、相手のタックルをものともせず弾き飛ばして人生初トライ(颯爽と自陣に引き上げる姿には風格すら漂う)。その5分後には2人を抜き去り、さらに相手2人をぶら下げて5mドライブ(相手は4人がかり!)。その5分後には相手からボールをむしり取り、ラストワンプレーでは対面を内側に抜き去った直後、外にステップを切り一瞬で加速。内から追いすがるDFを置き去りにして2トライ目を奪った。トライ数「5対3」でノーサイド。そのうち2本をオギが奪ったのは、この記事の題名が大げさでなく事実であることをはっきりと証明している。

衝撃のデビューか、いや、十分予想のついたデビュー戦内容だ。オギをこの記事の題名にすることは、実は試合前から決めていた。それだけの結果を出すことが分かっていたから。オギが楕円球に触れてから1ヶ月半。この試合の活躍より過激なパフォーマンスを、日々グランドで見せ続けていた。アタックDFでは上級生がノータッチでオギから抜き去られる姿は、いまや当たり前の風景。3年生が本気でかかっても、オギを止めるのは至難の業だ。加えて取り組む姿勢も素晴らしい。毎朝のキック練習であっという間にスクリューを飛ばせるようになり、メニューの合間には機敏に動き、練習の雰囲気を引き締める。「ポストカズ」「化け物」呼び名は様々だが、すでにチーム内で信頼と地位を築いていたのだ。

オギ

「今日、初めて試合に出させてもらって、『ラグビーの楽しさ』を実感しました。本当に1プレー1プレーが興奮状態で、この試合で学んだことはとても大きかったと思います。また、試合中の先輩の気迫、本気のタックル、絶妙なパス、全てが印象的でした。これからサインなども覚えていき、柏陽ラグビー部の一員としてファイトしていきたいと思います。」

面白かったのが他の1年生の反応だ。この試合でオギが活躍するたびに「なんだアイツ」「うぜー」「火星人だ」「もうパス練入れてやらねぇ」etc、全員が(愛と嫉妬に満ちた)暴言を連発。はっきりと「クソー早く俺も」という本音を、微笑ましくも覗かせた。1年生全員がデビュー戦を待ち望んでいる。早稲田の司令塔・山中亮平的な可能性を見せる大型SO、急加速でギャップを抜き去る力を持つ選手、通称「タックル3兄弟」の三男・・・他にも数えだしたらきりがない。

マッチャン(写真中央)

「今日は正直フォワードで負けてたと思います。スクラムはもちろん、強みのラインアウトも獲得率がひくかった。みんな集まる機会が少なくてあんまり練習できなかったのが原因だと思うので、明日から朝練などで精度を高めなきゃと思います。」

この日得たものは大きい。セットプレーの崩壊、上級生の意識への警鐘、全ポジション安泰のないレギュラー争いの勃発。明日からしばらく中間試験休みに入る。試験明けの土日は横浜セブンス(2チーム参戦)、翌週は市大会残り2試合のダブルヘッダー(土曜は超強豪・関東学院、翌日には横浜高校と対戦)。試験勉強、時には体育祭の準備に時間が奪われる。どちらも一生懸命やればいい。ただし、桐蔭戦の後の気持ち、この日の屈辱感、そして何より「俺はビッグチャレンジをしている柏陽PHOENIXの一員なんだ」というプライドとこだわりを持って過ごして欲しい。試験休み明け、一人ひとりの成長した姿が今から楽しみだ。

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