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菅平合宿記(前半)

2007/08/15

 照りつける太陽、爽やかで心地よい風。小さな町にラグビー場が約100面。通りを歩けばラグビーショップばかり。行きかう人はほとんどラグビー選手。土産屋に入ればクッキーも饅頭もすべて楕円球型。ラーメン屋に入ってもメニューは「ラガーメン(楕円の器)」・・・。ここはラグビーの聖地・菅平高原。86日、われ等が柏陽フェニックスは今年も聖地に足を踏み入れた。

 都内環八でやや渋滞にはまるもバスは概ね順調に進み、12時菅平着。3部屋+MG部屋に分かれる。もちろん部屋割りは学年別ではなくポジション別。こんなときこそ、学年間の距離を縮め、チームとしての絆を強めるチャンスである。

宿舎につくなり「合同練習しませんか?」との依頼が城東高校(昔の福岡工大附属)からあり、もちろん受けた。14時グランドでアップ開始。暑い!いつもはカラっと暑いのに、珍しく湿度を感じる。1510分、合同練習開始。BK1次の抜きあい。FWはスクラムとラインアウトを行った。その僅か30分後、大粒の雨が降り出す。「まぁ山の天気だし」と練習を続けるも、瞬く間にとてつもない雷雨へ。空は光り続け、雷の怒号が鳴り止まない。ごく近くに落ちている確信がある。さすがにゲームオーバー。合同練習は予定の半分もできずに中止となり、バスで逃げるように宿舎へ引き返した。

 

 風呂と食事を済ませた後は、合宿のファーストミーティング。戦術を確認した後は「家族への手紙」を全員書いた。20年以上前の話なので今もやっているかは定かではないが、ある都内の高校は菅平合宿に来たら必ず家族に手紙を書いていたらしい。数年前にその話をある本で読み、非常に感銘を受けた。「合宿行きたくねぇ。恐ぇ。やだ。」なんて弱音を吐こうが、ラグビー選手がラグビーの合宿で菅平に来れるのは、それだけで幸せの極みである。「ありがとう」なんて恥ずかしくて書けなくとも、「幸せなことなんだな。そしておかげ様なんだな」と自覚して、手紙を書くだけで十分に意味がある。今は何を書けばいいか分からなくて戸惑い、強制で書かされているだけかもしれないが、その価値はいつかきっと分かる。

 

2日目。620分起床で散歩。朝食後にグランドで単独練習。午後の試合に向けて、キックチェイスとカウンター中心に確認。2時間弱で宿舎に戻って昼食。

1540分キックオフ。相手は茨城県の日立一高(前半)太田一高(後半)。レフリーがやたらデカい。やたら迫力がある。実はラグビーファンなら馴染みのある顔。早稲田大学でキャプテン・監督を務めた益子俊志さん(日立一高OB)だ。益子さんは私が大学時代のヘッドコーチで、間違いなく当事日本一ハードな練習を課してもらった。「やるときめたら槍が降ってもやるんだよ」豪快に笑い飛ばしながら、走らせる走らせる。日立一高との練習試合は、この益子さんから「菅平登る?じゃーうちとやんべや!」と打診を受けて実現したものだ。

 

前半5分、椿が持ち込んだボールを逆目に展開。春からの練習の成果を発揮、きむにぃ→どきんちゃん→ケイ→コパと、深さを保った絶妙なストレートランでワイド展開。最後はカズが相手を抜き去って先制トライ。ターンオーバーから外に展開され1本返されるも、ラインアウトからのムーブで狙い通りのトライを奪い、日立一高との接戦を制した。

 後半、相手は全入れ替えで太田一高と対戦。デカい。17歳以下日本代表キャンプに参加したこともあるらしきナンバー8を中心に、タテタテモールの完全FWラグビー。しかし近場をパワーでこじ開けてくる相手への免疫を十分持つ柏陽FWは、リムーブスピードと低いタックルで簡単には崩されない。開始5分、柏陽カウンターからコパが相手を抜き去りケイへ、ケイも冷静に相手をひきつけてフィニッシャーカズへ。カズが快速を飛ばして先制トライを奪った。そのキックオフリターンから一気に攻める。アメリカ帰りのハードタックラー・リッキーがピックゴーでロングゲイン。テンポ良くひゃくぞうが順目に仕掛け、やはりフィニッシャーカズがカットアウトで相手を抜き去りトライ。その後もどきんちゃん、コパが相手を抜き去り、トライを重ねて完勝(前後半で29-7)

 

3本目は1年生試合。うずら中心に珍しくFWラグビーで挑む柏陽(バックスがやや消極的・・・)。うみさんのランなどで3本奪って勝利。この日一番の収穫は1年生が殻を破ったプレーを見せたこと。トキ、イマカズらは前に出るタックルで相手を倒し、うみさんはスワーブやチェンジオブペースで対面を抜き去り、絶妙のサポートでトライも奪った。その他の1年生も確実に成長の跡を示した。

 バスの到着まで僅かな時間ができたので、151本で日立一高と再戦したが、1時間の休憩を挟んだフレッシュな相手に対して、柏陽はさすがにエネルギーも集中力も切れ・・・。小さなミスを繰り返し、2本取られて終了。

  

                                                                元早大監督・益子さん

夕食後はみっちりビデオミーティング。うずらのノットストレート落胆集などで笑いながら、明るくポジティブな話し合いができた。ミーティングの雰囲気もやはり試合の収穫(1年生の活躍)どおり。1年生も今までよりちょっとだけ積極的に発言できるようになり、学年間の壁は、明らかに低くなっているようだった。

2日目のマンオブザマッチ・ひゃくぞう

 今まで自分に負けてなかなか相手にタックルが出来なかったので、この菅平合宿中になんとかタックルしようと思って臨んだ。菅平での試合はすべて芝のグランドでやったので、結構気楽に相手に向かっていけた。最初はまだ上半身にぶつかるだけだったけど、思ったほど痛くないことに気付いて徐々に下半身にぶつかれるようになった。自分より倍くらいでかい相手にも思い切りつっこめた。けど、まだまだ相手にはじきかえされて一人じゃ止められなかったので、筋力アップと、かたい柏陽グランドでも相手に向かっていけるかがこれからの課題なので頑張っていきたい。

21時半、ミーティング終了。あとは就寝だけだが、ここでサプライズゲストがロビーの登場(全くの偶然ですが)。ラグビーの関わる人であれば誰でも知っている超有名人。「炎のタックルマン」の異名を持ち(この名前の本も出版)、170センチの身長で日本代表フランカーとして長年活躍した石塚武生さんだ。ミスターストイック(そんな表現では軽すぎる!)。石塚さんについての逸話・伝説は星の数ほど。私が大学1~2年のころの早稲田大学監督だ。宿舎ロビーで約1時間、リッキー・ケイ・EBI3人に、「人とは違う努力とは」「ラグビー選手としての心構え」「礼儀やモラルとラグビーの関係」という訓育的内容から「少年院でのタグラグビー指導」「自分の高校時代」「指導者として気をつけていること」など、実に様々な話をしてくださった。3人だけでなく全員集めて話を聞かせるべきだったとすぐに後悔。私自身もいかに石塚さんの影響を受けているかをあらためて実感した。 

 

                炎のタックラー 元早大監督・石塚さん 

石塚武生さん、益子俊志さん、たった1日のうちに日本ラグビー伝説の男2人と接点を持つことができた。ラグビーに関わるものとしては贅沢三昧で2日目は終了。

 リッキー 

 今日はなんと元日本代表の石塚さんに会ってお話を聞くことができた!先生から前からどのような人なのか話しを聞いていたけれどあまりにもすごいので想像ができなかった。
会う前はものすごい不安でこんな高校生にまともに話してくれるのか恐かったけれどそんなのはすぐに解消されました。とても真剣に考え方や強くなるための生き方を話してもらいました。大雪の日に走ったり大木にタックルしたりどれも信じられない武勇伝ばかりで凄かった。
他のひとがトレーニングしてないときに自分がしかも一人きりでトレーニングをする。強くなるためにと考えながら(例えば真夏の午後2時に階段上りとか…)というはかなり参考になりました。 メンタルタフネスを手に入れるには効果的だということ 今の俺には一番必要なトレーニングだと思うのでぜひ挑戦してみたいです。
その他にもラガーマンとしてのマナーについての話しを聞き、いつも先生から言われていることの大切さが改めて感じました。
日本最高のFLと話しができるなんて本当に嬉しかったです!!貴重な時間をありがとうございました!

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