勝者への道 深まる自信と8点の壁
2007/06/24
横浜市大会初戦の相手は桐蔭学園中等教育学校。昨秋の花園予選で「0-59」と完膚なきまでに叩きのめされた相手である。桐蔭学園を全国区に導いた名指導者が率いるチームは、それは見事なスタンディングラグビーを展開し、当時の柏陽に付け入る隙を1回すら与えずに一蹴した。あの試合の直後に掲げたテーマが「逆襲」である。桐蔭中等は今季の柏陽にとって最終ターゲットとなる相手だ。できることなら10月に対戦したかったが、現時点でどこまで柏陽が桐蔭中等に近づくことができたかを計る「テスト」となった。もちろんチームは「逆襲」を今日にでも達成する気持ちで試合に臨んだ。ワイド展開の柏陽とキック&モールの桐蔭中等、キックオフ前10分から振り出した雨が気になりつつ、12時00分、キックオフ。
元々優れたキッカーをSOに据え、多彩なキックでエリアを取りにくるのが桐蔭中等の特徴である。加えてあいにくの雨。試合は序盤からエリアを取るためのキックの応酬となった。前半10分、早くもキックの差が出る。サイン以外でも多彩なキックをコーナーに落としてくる相手に対し、柏陽は自陣にもかかわらず6次攻撃まで攻めて下がり続けて、最後はミス。BKがあっさりと破られてトライを奪われる。15分、きむにぃはロングキックで相手SOと互角に蹴りあうも、それ以外の選手のキックが飛ばない。危険な箇所へのキック→カウンターを繰り返し、最後はフィットネス切れでトライを奪われる。
一矢報いたい柏陽は前半25分、ラインアウトからのムーブでドキンちゃんがギャップをつき、カズ、コパで前進。相手PKで得たラインアウトからケイ、きむにぃがゲインを突破し、最後はチューのナイスパスを受けたコパが相手WTBを外に抜いてトライ。練習の成果が凝縮された見事なトライだった。
ハーフタイムで意思統一した直後の後半2分、左スクラムからサインプレー。ギャップをついたカズから絶妙のタイミングで裏に上がったコパがボールを受け加速。トライとゴール成功でついに「14対12」逆転に成功した。
流れは完全に柏陽、それでも桐蔭中等は焦らずキックゲームを続けた。そしてこのゲームメイクが勝敗を分けた。キック処理ミス、蹴り負け、ペナルティーで見事なまでにエリアを失って3連続トライを許す(3トライはすべてペナルティーが基点)。終盤にコパが相手の裏にけりこみ、自らグラウンディングしたトライで1本返すのが精一杯。21対29でノーサイド。
うずら
この試合には『逆襲』がかかっていたためか、緊張していたと同時にとても楽しみな気持ちがありました。ラインアウトもモールも充分対策したし、絶対に勝てる!と自信を持って望みました。実際に試合ではしっかり練習してきたラインアウトDFは相手ボールを2、3本奪うことができ、成果が出て嬉しかったです。しかし、結果は21対29。この8点差の原因は各自の練習不足。来週は神奈川工業戦。今日出た反省を活かして来週は何が何でも勝ちたいです。
ほっしゃん
今日の桐蔭中等戦、トライを取る、一本いいタックルを決める、と意気込み、多少緊張しながらも先輩に励まされてノリノリで挑むことができました。ディフェンスのときタックルで相手を倒すことができたとき内心うれしかったです。でもその後の戻りが遅かったり、サイドディフェンスに入れなかったりと正直なところあまり役に立てなかったと感じました。オフェンスでもサインミスがあったり、蹴り合いでも走りたいのに走れなかったりと自分のメンタルの弱さが露呈した試合でした。次の神奈川工業戦は、個人技はもちろんメンタル面も鍛えて臨みたいと思います。
あと8点。小さなミスがなければ防げたトライが悔やまれる。ルールを忘れてミス選択してしまったドロップアウト、エリアを忘れて攻めてしまい失点した前半、ピンチを招く場所に蹴り返し続けたカウンターキック、「ここでムーブを決める」時にサイン通りに動くのを忘れた選手。それ以外にも各自が小さなミス(ハンドリングエラー以外)を連発した。格下が格上を倒すときには、綱渡りをひとつのミスもなく渡りきったときだけである。これほどミスを重ねては勝てるはずがない。にもかかわらず8点差である。つまり自力が近づいたことは証明された。
ではミスがなくなれば勝つことができたか。そうは思わない。柏陽ラグビーは「勝利」ではなく「勝者」を目指している。「勝者」とは「勝つに相応しい者・集団」であり、日々の努力や過ごし方で「勝者たりえる集団」になれたとき、キックオフ前にすでに「勝利」決まっているのである。キャプテン・ケイが振り返る。
ケイ
今日の試合の8点差は、色んな意味で大きな8点だったと思う。コパのランニングやタモリのセービング、そしてFWのモールをまったく作らせないサイドディフェンスやラインアウトで柏陽は最後まで必死にくらいついた。けど勝てなかった。それは、今日の試合までの過ごし方にあると思う。柏陽は試合になると本気になれる。けど、普段の個人練やウェイトでチームの全員が『桐蔭中等をぶっつぶす』気持ちで取り組めていたか。そこで本気になれないまま臨んだ試合で勝てないのは当然と言えば当然かもしれない。1年も含め、チーム全員が残りの一週間を本気で過ごせれば必ず神工に勝てる。その自信はついたと思う。だから努力するだけ。来週こそは絶対勝ちます。
2年生だけが柏陽フェニックスではない。1年生も含め、本当に全員がラグビーと誠実に向き合ってきたか、ウェイト中におしゃべりせずに自分を追い込めていたか、時間を見つけてキックや1対1、タックルの個人練習を重ねてきたか、放課後グランドに集まるスピードはどうだったか、遅刻や欠席はどうだったか、落ちているゴミを見逃さずに拾えたか、日々の挨拶や礼儀はどうだったか、我々はまだ勝者たりえてなかったのではないだろうか。
次の相手はセブンスで2回連続悔しすぎる僅差で敗れている神奈川工業。デカくて強いランナーを揃えている。タックルやブレイクダウンの局面でどれだけファイトできるか、柏陽一人ひとりの意地が問われる。
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