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横須賀決戦2011(伊藤 輝章)

2011/10/10

 
10月初旬というとまだ残暑で蒸し暑いことも多いが、この日は湿度も低く、風もほとんど吹いてなければ暑くも寒くもない。しかもグラウンドは一面が芝に覆われた大津グラウンド。絶好のコンディションで伝統校、いや、ライバル校横須賀との決戦に挑んだ。

柏陽はちょうど1週間後が全国大会予選1回戦。普通のチームならば怪我のリスクを考えて,全国予選の1週間前に練習試合などはしないだろう。とくに選手の少ない学校ならなおさらだ。横須賀と試合をしたいという気持ちはあったが怪我のことが頭に浮かび、監督の自分も最後の最後まで決断を迷った。しかし、選手たちは違った。
「怪我のリスクを考えてでも横須賀と試合がしたいです。」

全国予選1回戦の一週間前に試合をするからには、すべてを覚悟しなければならない。そう、この試合がどんな結果になろうともすべてを受け入れなければならないのだ。怪我人がたくさん出て1回戦をリザーブメンバー中心で臨むことになるかもしれない。ボコボコに打ちのめされて自信をなくすことになるかもしれない。全てを覚悟の上、柏陽は公式戦の0回戦と位置づけ、ファーストジャージで臨んだ。



対する横須賀もファーストジャージ。お互いにこの試合に対し最高の敬意を払い、まさに公式戦といった張り詰めた空気がグラウンドに漂った。14時試合開始。柏陽ボールでキックオフ。入りの集中力はこのチームになってから最高の入り、といっていいほど序盤はミスなく敵陣で攻め続ける。だが、思い切って準備してきたアタックを試みるも、横須賀の堅いディフェンスを前になかなかトライをさせてもらえない。こちらの狙いどおりにスペースが出来る場面もあったが、素早いカバーディフェンスに何度も防がれた。敵ながら、横須賀の集中力も素晴らしかった。
前半も10分が過ぎたころ、横須賀の得意とする形でトライを献上すると、その後は横須賀が試合の主導権を握りはじめる。対する柏陽は低いタックルで何度も何度も刺さり続けるが横須賀の意図するボール運びに対応できず、60分を終えて最終スコアは59-0。今年度の柏陽対横須賀の対抗戦は完敗に終わった。




スコアこそ開いたが、この対抗戦は柏陽にとって本当に価値
のある試合となった。まずは公式戦の直前に公式戦と同様の緊張感、雰囲気、モチベーションで試合ができたこと。そして、自分たちが目指すレベルはどこまでやらなければならないかを横須賀が教えてくれた。シード校の壁は甘くはない。

最初に両チームの選手が整列したときから一目瞭然。柏陽は横須賀に比べればひと回りもふた回りも身体は小さかった。しかしその小さな身体で、最後までしぶとく低いタックルでささり続ける姿には観る者の心を揺さぶった。勝ったとしても、負けたとしても、そんなラグビーがしたいと常々自分は思ってきたし、少なくとも自分は今日の試合で選手達からまたひとつ大きな財産をもらった。もしこれで終わりならば、選手達にはありがとうといって終わりたい。




しかし高橋組の最終章はここから。ここで終わるわけにはいかない。まだまだこのチームでラグビーがしたい。このメンバーでラグビーを楽しみたい。1週間1日を大切にして、そして再び公式戦の舞台で心揺さぶるような試合をしよう。

そして起こそう、番狂わせを。

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