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松山より 離任のご挨拶

2010/04/19

 まずは、OBの皆様、保護者の皆様、ファンの皆様、そして現役部員のみんな、4年間の幸せすぎる時間を本当にありがとうございました。自分の高校時代は本当に幸せな輝いた季節を送ることができ、これ以上の幸せな時期は今後の人生にはないに違いないと思いました。しかし早稲田ラグビーでも「今のこの瞬間が人生最大の幸せだなぁ」と感じ、卒業後もタマリバクラブで過ごした素敵な時間もやはり「過去最高の幸せ」と感じました。その後立教大学でコーチをやらせてもらったときにも、やっぱり同じ気持ちになりました。そしてこの4年間、まさに私の人生で最も幸せで充実した季節となりました。皆様の支えがあってこそ、特に現役部員たちの頑張りがあっての幸せでした。心の底から感謝しております。

 そんな過去を少し振り返ってみたいと思います。このホームページを読み返すと、すべてのことを記事として残しておいて、本当によかったなと思います。

懐かしいですね。平沼や港北との合同チームからスタートしました。

 

 始まりは柏陽高校赴任直前の2006年3月、突然携帯電話に電話がかかってきました。相手は松岡OB会長でした。「どうか部員0で休部状態にあるラグビー部を復活させてください」と、熱く話してくださいました。その翌週には大船の居酒屋で堀さんや松岡さんとお会いし、「復活作戦」を話し合いました。プレゼント用オリジナルジャージ「Make the history 2006」を用意し、万全の体制で部員を待ちました。

 あっという間に10人は超えるなと、自信に満ち溢れていました。ところが待てど誘えど口説けど、いっこうに一人目の入部者が来ない…。言い表せないほど落胆したのを覚えています。佐倉慧の「俺ラグビーやりたいです」の一言で始まったフェニックス。真下が、響太が、初代佐倉組のみんなが次々と集まってくれました。みんなで愛称(フェニックス)を考えたり、ロゴやジャージ、エナメルバッグのデザインを考えました。何をやるにも新しく、すべてが創造で、楽しくて仕方ない時期でした。

 佐倉たちの代は、逆襲を楽しんだ年月でした。文化祭招待試合で横浜隼人にズタズタにされて、部員ははじめてラグビーで涙を流しました。3年目、逆襲隼人!そして逆襲中等(桐蔭中等教育)!魅力的な攻撃力を駆使し、次々に逆襲を達成しました。そしてあの横須賀戦で、ともに復活と創造の道を歩んだ佐倉組は終わりました。あの一戦は、今でも私のラグビー人生で最も辛く、ダメージを受けた試合となりました。

フェニックス初代キャプテン・佐倉慧 ともに戦った一生の仲間です。

 

 堀内たちの代は、本当に苦節の日々。だからこその感動のフィニッシュでした。佐倉組のような華やかなタレントがいない。部員もたくさん辞め(でもたくさん戻り…)、努力しているのに勝てない。新人戦、そして関東大会予選と、まったく勝てませんでした。経験者やタレントがいない代なので、努力が実るには必ず時差が生じます。苦しいけど部員も私も必死に過ごし、努力がいつか実ることを信じて過ごしました。夏合宿を経て、チームは劇的に変化したときは「ついにきた!!」という感じでした。この代も中等に逆襲を達成する過程を経て、最後の花園予選を迎えました。

OB総会。フェニックスのみんなもいつかは必ず参加してください!

 最後の桐蔭戦、最高でした。あの試合は県内外の多くのラグビー関係者に衝撃を与え、「ド素人公立高校が全国準優勝に偽りなく勝ちにいった」事実がメディアを通しても絶賛されました。しかしごく一部の人からはボールを動かさない展開に対し、「あんなラグビーをやったら高校でラグビーが嫌いになってやめてしまう」という意見も出ました。しかしあのラグビーによるあの60分が柏陽の部員にとって人生最高の時間で、結果としてラグビーがもっと好きになり、絆も思い出も感動も、何もかもが最高の状態に導かれた。そんなことは当事者である部員全員が確信しています。

 悪天候の中、柏陽のタックルがかわせずミスを連発した相手が結局後半はじめに出した指示とプランは「もういい!今日は一切回すな!キックだけ」だったので、結果として柏陽の方が天候に対して先手を打ってオプションを絞り込み、前半は成功したというのも事実です。環境と素材で100倍以上も劣る選手たちが本気で挑み、激闘を演じ、感動を得ました。彼らはあの日々とあの試合から、きっと生涯の財産を手にすることができたんじゃないかと思います。本当に堀内組の全員に、心から敬意を表します。

 

 オギ組は、チームの質が劇的に変わった代です。堀内たちの生き様が勇気を与え、1年間本気で勝負する覚悟を決めました。毎日昼休み集まってはみんなで体幹トレーニング。月木のウェイト日も練習を1時間加え、ほとんど毎日朝練もやっています。全員強制のタッパーを購入し、学校で毎日3合の米を食べています。不意にグランドが使えない日には近隣のゴミ拾いに出かけたりもします。そんな何もかもが、すべて自分たちで考え、自分たちで決め、行動していることです。もちろん勉強との両立に関しても培った人間力を発揮し、練習やウェイトが終わったらすぐに勉強場所に直行したり、練習試合先でも空き時間ができたらさっと参考書を出す姿が当たり前になっています。高校生だったころの自分の姿を思いますと、「なんて立派なやつらだろう」と本当に敬服します。

 ただやっぱり部員は2~3年生で18名。経験者は僅か1名。時間がかかります。努力が実る時差が生じます。でもこれほどの努力を天が裏切るわけがありません。時々は自分たちの現状を批判的に分析する眼を持ち、努力している事実だけで自己満足に陥ることなく、やっぱり今の努力を重ねて欲しいなと思います。こんなに誠実に仲間とともに努力する日々は、もしかしたら人生二度とないかもしれません。きっと人間的に大きく成長し、一生もの仲間と思い出を手にすることと思います。

最後となった日大戦の後。終わりは私だけで、みんなの道は続きます。

人事異動に関しては、前回記事末尾に書いてあります。

 

 つくづくドラマチックな4年間でした。佐倉たちの最後には「(クジで)横須賀を引け」と言ったら本当に横須賀高校を引き、堀内たちの最後には「桐蔭か横須賀だな」と言ったら、桐蔭を引いた。そして(私の)最後の大会、「やっぱり横須賀」と言ったら、本当に横須賀を引いた。奇跡か必然か運命か、目に見えない何かを感じました。最後は横須賀高校に対する4年間の思い?呪縛?怨念?を半分だけ果たし(引き分け)、日大高に木っ端微塵にされ、私の柏陽ラグビーは幕を閉じました。いい区切りだなとも思います。

離任式の日。たくさん集まってくれてありがとう!本当に嬉しかったよ。

 

 日々の努力と真摯な姿勢は継続して欲しい。先輩たちが残した背中は忘れないで欲しい。そしてラグビーに関しては、捨てるべきは捨て、取り入れるべきは取り入れて欲しいと思います。伊藤先生は若く、情熱も知識も経験もあり、きっとみんなの話を聞きながら一緒に戦ってくれます。楽しむ気持ちを忘れずに、フェニックスをより飛躍させて欲しい。佐倉組や堀内組を越える何かを残して欲しいなと思います。オギ組なら間違いなく、すごい何かをやってくれます。確信しています。

左下は佐倉組が作ってくれたメッセージアルバム。大事な大事な宝物です!

 

 環境や人材は今後もきっと厳しいでしょう。間違いなく、県下で最も厳しくラグビーと勉強の両立を求められ、果たしていくことでしょう。だからこそ、人間が磨かれ、絆は強まり、感動は大きくなります。関東大会予選、粉砕されました。でもそんなの柏陽は「前提」です。佐倉たちだって堀内たちだって、何度も踏みにじられては立ち上がりました。下を向いてる時間なんてなかった。勝てない日々が続くかもしれない。部員不足に苦しむ時期が来るかもしれない。苦難や試練が訪れるかもしれない。それでも死なない。何度でも立ち上がり、何度でも大空を翔る。だから「フェニックス」と名づけたんです。今年も来年も、十年先も二十年先も、どんな苦しい状況に陥っても何度でも立ち上がるフェニックスの姿を、遠くより微笑みながら見守っています。

 

フェニックスワインと焼酎・不死鳥。栓開けれるわけないよ!!

 

『グランドに薫る 鎌倉の風 栄えある歴史を 心に刻み いざ跳びゆかん 不死鳥のごとく 我らが創る 新たな歴史 羽ばたけ 蒼き空を 勇ましく 誇り高く 柏陽ラグビー柏陽ラグビー 我らフェニックス』

 こんなにも素晴らしい部歌をみんなと一緒に作れたことを誇りに思います。どうか部歌に恥じない生き様をみせてください。

 

誕生日のたびに色紙をもらいました。右はメッセージジャージ。優しさが沁みます。

 

 何度振り返っても、どの瞬間を思い出しても、「楽しかったなぁ」「幸せだったなぁ」という言葉しか出てきません。思い出がキラキラ光を放ち、涙を誘ってきます。私のことを「監督」ではなく、「人間・松山吾朗」として信頼してくれた佐倉たち、堀内たち、オギたち、カリブたち。そんなみんなの想いを裏切ることなく、自分らしくあり続けたいと思います。目の前にいる人間にすべてを懸け、打算なく心の底から愛しぬくこと。これからは新しいチーム、新しいクラブ、新しい環境に、己のすべてを捧げます。でも人間対人間の1対1の関係は、何十年先でも決して消えることはありません。今後ともどうかよろしくお願い致します。4年間の至福の日々、本当にありがとうございました。

              柏陽フェニックス2006~2009年度監督・松山吾朗

大好きな大好きなみんな  幸せな時間を ありがとう!!

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