vs追浜高校 『緊張と冷静』
2009/10/18
畏れ。花園予選に対して。ラグビーに対して。10月18日、花園予選2回戦が行なわれ、追浜高校と対戦した。部員数は柏陽の1.5倍。体も筋肉隆々。基本プレーもきっちり仕込まれている。一人ひとりの運動能力はおそらく柏陽より優れている。つまり「条件」の部分では柏陽より追浜の方が各上だ。しかし9月以降に行なわれた2試合(横須賀戦・合同戦)を偵察分析する限り、ラグビーの理解とシステムにつけ入る隙は大きい。勝利への戦術的ビジョンが描きやすい。抱いた自信と確信に間違いはない。しかし、それでも「畏れ」は消えない。
1年前の花園予選、横須賀高校に敗れたときに、心に刻み込まれた。「花園予選は恐ろしい」そして「やっぱりラグビーは恐ろしい」。インフルエンザによる学校閉鎖で体と感覚は若干鈍ったが、直前までケイ組OBが胸を貸してくれたこともあり、準備は概ね抜かりなし。前日の練習も完璧な空気だ。あとはこの「畏れ」を真摯に受け止め、「ネガティブな緊張」と「浮き足立つ」を排すること。ほぼ同時刻に東京都で国学院久我山に挑んでいる兄弟分・学習院高等部からの応援メッセージで、雰囲気は最高に「アゲアゲ!」だ。
14時、キックオフ。開始10分を敵陣に居座り続ける悪くない立ち上がり。しかし基点となるべきラインアウトで簡単なミスを連発。蹴っては強風に流されてダイレクトタッチを連発。やはり緊張か・・・。自滅を繰り返して得点が取れない。そして前半15分を過ぎた頃、たいへんな試練が襲ってくる。「副将イマカズが負傷退場」「司令塔まりもがハイタックルにより7分間のシンビン」そして「追浜に先制トライ」を許してしまったのだ。花園予選は恐ろしい。逆境。試練。前半を「0-5」のビハインドで折り返すこととなった。
後半開始。残り時間は25分。ただの25分ではない。追いつけないと「ほっしゃん組引退」に直結する25分。焦りと不安が生じてもおかしくない。思いがけない「0-5」での折り返し・・・。1年前の横須賀戦と嫌になるほど同じだ。
しかしこの土壇場にきて、夏以降に逆境と試練を乗り越え続けてきたほっしゃん組の経験と底力が見事に発揮された。オギの高速外人タックルで試合の流れを変えると、全員が冷静かつ激しくDFを継続し、我慢できなくなった相手が蹴った不用意なキックをカウンター一発でオギが同点のトライ。5分後にはスクラムから計画通りにまりもが勝ち越しトライ。
BIG HIGHはプランどおりに相手の穴を見極めてゲインを連発。キックオフリターンをミットが破壊力抜群のロングゲイン。2年生の活躍に頼るものかと、ほっしゃんが豪快に突破、ぴー、トキが生き生きとボールを手に躍動した。攻守共に何もかも戦前の分析とデザインどおり。すべてのメンバーがこの緊張と逆境の最中に、見事なまでに冷静に的確にゲームプランを遂行してみせた。スコアだけは最後まで緊張を保ったままだったが、やはりDFも想定どおりにきっちり守り抜き、「12-5」でノーサイド。
ほっしゃん
「今日は桐蔭戦というプラチナチケットをかけた決戦でした。相手も花園予選らしい激しい気持ちでしたがこちらが上回り、タイトなゲームに競り勝つことができました。来週の桐蔭戦は三年間いままでやってきたことすべて出し切りたいと思います。」
ぴー
「勝てて本当に良かった。今日の試合はそれに尽きると思う。夏の菅平合宿で得た接戦を勝ち抜く力、それとその大切さを思い出させてくれた横須賀との練習試合での敗戦がこの勝利を導いたんだと確信している。(試合前に学習院の先生が『柏陽ほどラグビーを楽しんでやっているチームはない。今日はアゲアゲで頑張って欲しい』とおっしゃっていると聞き大変勇気をもらいました。)追浜に先制点を取られ、まりもが偶然ではあるけれど犯してしまったシンビン。普通なら焦って普段通りにプレー出来ない所だけれど今日は大丈夫。はっきり言って100%勝つ自信が有った。今まで積み重ねて来たもの、そして仲間を信じ抜けたからだ。そんな試合だったからこそノーサイドの瞬間は今までで一番嬉しかった。3回戦は桐蔭学園が相手だけれど仲間と1日でも長くラグビーを続けるために全力で勝ちに行きたい。」
オック
「勝てば桐蔭戦という試合で、とても緊張しました。しかし先輩たちのテンションを見て、僕の緊張も少しやわらぎました。先制点を入れられたときは本当に焦りましたが、オギ先輩のトライで雰囲気が良くなり、それからは柏陽の流れだったと思います。勝てて本当に良かった。何より、3年生がまだいてくれて嬉しいです。」
薫山(トレーナー)
「なんだかんだで初めての花園予選。今日の朝は目覚ましの鳴る前に起きてしまい、無意識に結構緊張していたようだ。俺の仕事は選手を万全の状態で試合に臨ませる事。本当に皆万全なのか?という思いがどこかにあったからかも。そんな感じでグラウンドに行くと、希望ヶ丘の面々がいた。もちろん本物のトレーナーの方も。「血の処理だけしっかりね。」気持ちが楽になりました。そして俺の事覚えてくれててありがとうございます! 試合が始まると、序盤は以前先生が言ってたように、ぎりぎりで指がひっかかってトライ出来ない事が続いてハラハラしたけど勝てて良かった~。泣きそうになりました。来週は柏陽ラグビーの関係者全てが待ち望む桐蔭戦。今度こそ何の気掛かりも残さないように、一週間しっかり調整頑張ります!」
きょえん(右) 試合後に選手からサプライズ感謝色紙贈呈!
「今日は私も朝からずっと緊張していました。でもこんな雰囲気を味わえるのはこの大会だけ。1週間後、再び最高の時間を過ごすために明日からまたグランドで頑張りましょう☆ あと、サプライズありがとおございました。感謝を力に残りの時間を大切にしたいと思います(^O^)/」
ケイ組と比較されて「タレント不在」と言われながらも真摯に誠実にラグビーと向き合ってきたほっしゃん組。勝てない苦悩、葛藤、フラストレーション。それでも諦めずに上を向いて声を出して頑張ってきた。夏合宿の試練(相次ぐ核の負傷)を乗り越え、桐蔭中等に逆襲を達成し、この日の「決戦」を制した。そしてついに最高のご褒美「プラチナチケット VS桐蔭学園」を授かった。相手は現・関東チャンピオン。極上の相手だ。もう緊張など不要!挑戦意欲、割り切り、意地、楽しむ心!ほっしゃん組の幸せな1週間が始まる。
大応援団、ありがとうございました!
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